帰宅ラッシュの人だらけ。
喧騒にまみれた大通り。
人で溢れた町並みで、
僕は縫う様に走り抜ける。
後ろで僕の名を呼ぶ叫び声。
僕は今、追われている身だった。

キラであることがバレた

わけではない(笑)

でもまずい状況であることは確かだ。
「月君、待つんだ!!」
待てって言われて待つ犯罪者がいると思う?
きっと後ろでは僕の恋人2号(笑)松田さんが、
人ごみを掻き分け追いかけてきているはずだ。
かきわけ、押しのけ、走りぬけ
僕等の追いかけっこは続きそう。
そう、僕は犯罪者。
やっちゃいけないことやっちゃって、今、警察に追われる身(笑)
はてさて
どこから説明しましょうか?







私の恋人は縛られるのが大嫌いだ。
本当はその細い四肢を縛り付け、
私の元から逃げない様にしたいのだが、
自由奔放の我侭な所が彼の可愛いところ。
寛大な私は、彼が他の男と付き合っていても
知らぬ顔で紅茶をすする。
しかし、一つだけ約束を。
「私と松田、男はそれだけにしておいてください。」


僕の恋人は縛られるのが大嫌い。
本当は何処にも行かせず、
僕だけのものにしたいのに……。
それでも我慢して僕はあの男と、
可愛い仔猫を共有する。
でも、一つだけ約束。
「Lと僕以外、男は作らないで。」


「わかってるよ、そんなこと。
僕が好きなのはLと松田さんだけ。
それ以外に考えられないよ。」


っていった次の日の飲み会。
嘘ついちゃいました(てへ)
いやまあ、笑って済ませたら苦労はないんだけれど。


でも悪いのは二人なんだよ?
僕がこんなにもアイシテいるのに、その日Lはずっと資料を読みふけり、松田さんは買出し。
だからその夜の飲み会でちょっとばかり飲みすぎて。
どれくらい飲みすぎたかというと、帰宅途中の男の人を松田さんと間違えるくらい(笑)
そのままホテルに直行、みたいな?そして気づいたときには相手はシャワーを浴び終わって、
僕の上に圧し掛かってたわけだ。
どうしよう、考えたのは一瞬だけ。
ばれないばれない、大丈夫大丈夫♪
そう思った次の日に。
バ・レ・ま・し・た(滝汗)


頭痛がする頭を振り、私は彼を冷たい目で射抜く。
「どうして松田に羽交い絞めにされているか、
お分かりですか?」
彼はすました顔で、明後日の方向を見ている。

いや、ぶっちゃけ、わからなかったね。
捜査本部のホテルに来て一時間後、
いきなり鍵を閉められ松田さんに捕まったときは、
キラであることがばれたのかと思ったよ。

「服、脱いでみて。」
僕は自分の人生の中で一番冷たい声音で彼に囁いた。
月君は妖艶な流し目で僕を見る。

私は月のワイシャツに手をかける。
そのまま一気に下に引き裂く。
露となった白い肌には、私の知らぬ鬱血の痕跡が、幾つも見つけられた。
「ずいぶんと、可愛がられたようで。」


一夜限りの男は、やけに愛撫がうまかった。
完全に翻弄されていた僕の耳に、男はバリトンの声音で囁くのだ。
つけてもいい?僕は笑った。どうぞ、お好きなだけ。


「君のポケットから携帯番号の書かれた紙を見つけてね。」
しかも手書きだ。そしてこの胸の痕といい確信した。男を作ったと。
それを彼の前にもっていき、ぺちぺちと頬を叩く。
「ねえ、どう思う?ウソつき。」


情事が終わったその後に、男はまた会いたいと言った。
僕は断る。ダメだよ、嫉妬深い犬が二匹、僕を監視してるから。
男は僕の冗談に笑って、こう言った。
君に尽くしたい。だがここで札を渡しても下品だろ?
確かにその通り。僕は男の番号だけいただいた。
まだ酔いがさめてなくて、僕はうかつにも財布に入れてしまった。
それがまずかった……。


彼等の目を見て悟ったね。
こりゃもう言い訳は通用しないって。
というか、何を言っても二人とも完全に血が上っている(冷静に見えるけど)
「お願いだよ、松田さん……離して…痛い…」
がっちり抱え込む松田さんに、僕は頼み込む。
離してくれるとは思ってないさ。でも力が緩んだ。
その隙を突いて、僕はするりとしゃがみこむ。
はい、抜けました。
二人の頭が冷えるまで、僕は旅立ちます(ってどこへだよ)
そして僕は逃亡した。


鮮やかなすり抜けで、月君が僕の腕から消えた。
はっとしたときには彼は出口に走っている。
捕まえようと手を伸ばすが、シャツの繊維に指先が触れただけで、
彼はあっけなく鍵を開け、逃亡した。
振り返ればLと目が合う。

なにをやってる、この馬鹿松田!
しなやかな動きで彼は松田の腕から逃げると、
私たちの前から逃亡した。
捕まえようと追いかけた姿勢の松田と目が合う。


捕まえるのは僕だ。           

          捕まえるのは私だ。


僕は全速力で、月君の後を追った。


私はすばやく携帯電話を取り出し、ワタリに連絡を取った。




階段を駆け下りホテルのロビーについたはいいけど、
さすがは警察官。こんどこそ僕の服を捕まえた。
引き寄せられる前に僕は息を大きく吸い込んだ。

「誰か助けてええええぇぇぇ!!」
月君が少女のような悲鳴を上げる。
ホテルマンたちが、一斉にこちらを見た。
ひるんだ僕を尻目に、月君はまた僕の手から抜け出す。
そして近くにいたホテルマンにしがみつくと。
「あ、あ、あの人が突然!僕の服を!」

ワタリが車を出した頃、目の前を月が猛スピードで通り過ぎた。
しばらくすると、へとへとになった松田が、彼を追いかける。
ワタリは無言でそんな彼等を見送る。




女子高生におばさん集団、サラリーマンに外国人
僕はシャツの前を押さえながら、
大通りをひた走る。
僕と松田さんの追いかけっこを、
そんな彼等は不思議そうに見ている。

さっきのお返しだ。
様々な人の群集を掻き分け、僕は叫んだ。

「待て!そこの万引き犯!!誰か捕まえてくれ!!」
学生たちがぎょっとする。サラリーマンが目を見開く。
おばさん達が悲鳴をあげ。外国人が口笛を吹く。
そして勇敢な若者が、僕の進路を妨げる!!
うっわ、信じるんですか!?僕がそんな風に見えますか!!
妨害の手を払いのけ、僕は進路変更をする。
急な方向転換に、群集は一瞬パニック状態に陥る。
僕は大型百貨店に足を踏み入れる。

ワタリは一部始終を、大通りの片隅で見ていた。
そして停めてある車に足を向かわせる。

洋服売り場を走りぬけ、宝石店を通り過ぎ、仔猫は捕まるまいと必死なようだ。
店の中に入れば追われないと思ったか!?
それは甘い考え。進路変更で遅くなった彼の足取り。
僕はスピードアップして彼に手を伸ばす。
さらりとした髪が僕の指に触れる。
逃がさない。今度という今度はもう許さない。
もう、浮気なんて考えがおきないように、よく懲らしめないと。
さらに手を伸ばすと、彼の速度ががくんっと落ちた。
捕まえた!
と、思ったら。

僕は思いっきり急ブレーキをかけた。
勢い余ってぶつかる松田さん。
転げそうになるのを必死で押さえ、裏口へと走る。
扉を開け放ち、階段を飛び降りようとした瞬間。

ワタリは飛び出してきた月を受け止めた。
受け止めた衝撃は相当だったはずなのに、老人はびくともしない。
そしてそのまま車に向かう。
「え?え、えええ?あれ?ちょ……」

僕がよろよろと裏口をあけると、
一台のベンツが僕を馬鹿にするように、目の前を通り過ぎていった。
Lのやつ…他の人間を使うなんて卑怯だ!

一人残った捜査本部。
私は携帯をしまった。
そしてつぶやく。
「……何故、ワタリと連絡がつかないんだ?」




「ワタリさん!助かった〜、ありがとうございます!」
僕は愛想いっぱいの笑顔で向かいに座るワタリさんにお礼を言った。
何故かこの初老の執事は、僕を車に連れ込んだ後、
マクドナルドで奢って貰っていた。
「別に特別に助けたというわけではありませんよ。
ただ、大の大人が少年を追い掛け回すというのも、目立つものですから。」
ワタリさんはにこにこと、ポテトを食べやすいように出してくれている。
「少し、遊びすぎではありませんか?」
「ごめんなさい……」
なんか…どうもワタリさんに言われちゃうと、素直に謝っちゃうんだよね。
やはり笑顔を崩さぬまま彼は、
「しかし、月君。逃げ回っても解決されませんよ。
問題を後回しにするなど、貴方らしくないですね。」
「そんなことないですよ、ワタリさん。」
僕はにやりと笑って、アイスティーに口をつけた。
「…時間が経てば経つほど、僕は有利になっていく。」


「……どういうことですか?」
ホテルに戻った僕は、Lの言葉に愕然とした。彼は紅茶にぼとぼとと砂糖を入れながら、
「だ・か・ら。」
ぴっと人差し指と中指で例の携帯番号の紙を掲げる。
「女性の電話番号だったんですよ。掛けてみたら。」


11桁の数字の中で。
9の数字を8の数字に書き換える。
するとあら不思議。
浮気相手のケータイ番号が、クラスメイトの女子生徒のものに早変わり。
偶然にもそれを発見した僕は、浮気相手にペンを貸してもらい、
二人で笑いながらそれを変えたのだ。
嫉妬深い犬達に見つかったら大変だからね。そんなことを言いながら。
「そろそろ二人も頭が冷えてる頃だろうから、
そこに僕が電話をする…」


『ごめんね、二人とも。僕だって男だから、
女の子と付き合いたいよ。わかってくれるだろ?』
私は携帯越しにそう許しを請う恋人に頭を抱えたくなった。
電話が終わると松田が不機嫌そうに、
「彼の言葉を信じるつもりですか?」
「………………そんなわけないでしょう。ただ、証拠がね……」
苦虫を噛み砕いたような表情で、私は首を振る。
それにしても、ワタリは一体何処へ消えた?
私が首を捻っていると、松田がその答えをくれた。
「お宅のワタリさんが、月君連れて行くの、見ましたよ。」
………………………(大激怒)




「ワタリさん、これは内緒だよ?」
僕は唇に人差し指を当てて首をかしげる。
ワタリさんは珈琲をすすりながら、
「遊びすぎにはご注意ください。」
「さすがワタリさんだ!話しわかる人って僕、好きだよ!
そうだ!なんなら僕と付き合ってみます?」
ワタリさんは表情を変えずに、
「彼等と三つ巴になるつもりはありませんよ。
ですが………。」
「ですが?」
「私があと5年若ければ、お受けしていたかもしれませんね。」
僕は大笑いした。
「あははっ!今でも十分大丈夫ですよ!きっと!」




それでも本当にアイシテいるのは二人だけ。
だから浮気はこれっきり。
……で、済むかな?その時のノリしだいだね(大爆笑)
逃げて追われて捕まって
もがいて騒いでまた逃げて
僕等の逃亡劇は
まだまだ続きそう。




ちなみに余談だが。
このずーっと先のこと。僕がいろいろあってLと鎖で繋がれちゃって、
第三のキラとか出てきちゃったときの話。
ヨツバグループの会議室に監視カメラを設置したところ。
あらびっくり、浮気相手の奈南川さんが座ってるじゃありませんか。
その時『げ!?』なーんて悲鳴を上げて周りが怪しんだけど、
まだまだ先の話だから、気にしない気にしない♪




人生、ノリで生きていくのも
悪くないんじゃないのかな?
さあ、疾走をやめないで
笑い転げながら、走って行こうじゃないか



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