神様に願いを




 神様、神様。
 神様、神様、神様。
 お願いがあります。
 どうか、僕を……。



 「え?なにこれ、テレビ映ってんの?」
 「やだー、なになに?取材?」
 「キラについて?ってキラなんだっけ?」
 「はあ?ばかじゃん、あんた。キラ、知らないの?ほら、ずぶん前に有名になった…」



 白い白い部屋の中、僕は中央のベットに縛り付けられている。
 ここにつれてこられて、どれくらいたったんだろう?
 もう数えるのも面倒になった時間を、僕はずっとここで過ごしている。
 「ころして……」
 多分僕は頭がおかしくなったんだ。無駄だとわかっているのに、その言葉しか出てこない。
 「ころして……」



 「だからさー、キラってLに捕まって処刑されたんでしょ?」
 「捕まったっていう話あったっけ?」
 「犯罪者死ななくなったから捕まったんじゃん?」
 「違うよー、キラって処刑されたんじゃなくって、どっかの研究所に入れられてモルモットにされ
てるんだよ。」
 「うわー、話、飛躍しすぎー。」
 「だってキラって超能力者でしょ?どこかでかい国が買い取ってさ、暗殺とかにつかうんじゃ
ん?」



 僕はなにをしたんだっけ?
 なんでここにいれられているんだっけ?
 ……………………。
 ああ、そうだ。
 僕はキラの容疑でLに捕まったんだ。
 ………………………。
 部屋に誰か入ってくる。
 監視カメラとベットとマジックミラーしかないこの部屋に、数人の医者が入ってくる。
 医者?白衣を着てるから?違う、彼等は僕を調べにきた人だ。
 「殺し方は、思い出せたか?」
 一人が言う。僕は首を振り、
 「ころして……」
 一人がなにか合図をする。僕の腕になにか注射をする。いつもの安定剤だ。
 「Lは……?」
 僕の問いに、誰も答えてくれない。



 「結局さ、Lってなんだったわけ?」
 「だからただの馬鹿だって。」
 「あれ?Lって死んでなかった?」
 「それ、テレビで処刑された奴のこと?」
 「違う違う、探偵の方。ネットの噂でさ、死んだとか何とか。」
 「キラに殺されたの?」
 「えー?なんかね、キラを捕まえたはいいけど、そのキラの身柄を取り合って、どっかの国と
喧嘩になって、殺されたとかなんだとか……」
 「だからどっかの国ってどこ?」



 「Lに会わせて……そうしたらなんでも言うこと聞くから……」
 嘘だ。僕は本当は殺し方なんか知らない。
 僕の記憶は何かパズルが抜けてしまったように欠けている。
 きっと前の「僕」は、どんなことがあろうとも彼等に能力を教えたくはなかったんだ。
 でも、一目でいい。会いたい。彼と会いたい。
 でも、会えないんだ。
 僕がどんな条件を出そうとも、彼等は聴く耳を持たない。
 だからきっと、彼はもう……。
 「ころして……。」
 その願いもかなえられるまま、今日も辛い実験が始まる。



 「ようは、どうでもよかったわけよ、あたしたちにとっちゃ。」
 「そうそう。どっちが勝とうが負けようが、あたし達死ななっきゃね。」
 「それに、キラに救ってもらうほど、この世界腐っちゃいないしねー。」
 「あはは!言えてる言えてる!」



 神様、神様。
 神様、神様、神様。
 お願いがあります。
 どうか僕を。
 地獄の業火で焼いてください。
 天国へいきたいとは言いません。
 幸せになりたいとも言いません。
 ただ僕は、地獄の業火に身を焦がし。
 罪を浄化したいだけなのです。
 そして彼に会いたいんです。
 神様、神様。
 神様、神様、神様。
 聞いていらっしゃいますか?



しかし、貴方は地獄にも天国にも行けない。
それが死神との約束。





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