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『意中のアノヒトをゲット!私はこんな方法でカレとベットにもつれこみました!』
(は?馬鹿じゃないか?だいたいもつれ込むてなんだよ……)
『オトコは皆、お風呂上りの女性に弱い!そして大きめのパジャマで上目遣いで『してv』って
言えば、どんなヤツでもイチコロよv』
(はあ?なに考えてるんだこの投稿者。ってか、そんなんで落ちる彼氏もどうかと思うけど…
ま、そんな方法しか思い浮かばない馬鹿には馬鹿な相手が似合うってことだな。)
ふっと鼻で笑う。そして月はさりげなく、さりげなーくそのティーン雑誌を鞄の中に入れ、
(やれやれ、くだらない文字に目を通してしまった……こんなもの読む暇があったら帰ってデ
スノートに名前書かなきゃな…)
そしてさりげなーく、さりげなーーく、教室から出て行った。
「……あれぇ?ここに置いてあったあたしの雑誌はぁ?」
その持ち主のクラスメイトが、不思議そうに盗まれた雑誌を探しているのを背に。
夢見がちらぶすとーりー
ばっと雑誌を広げ、じーっとその内容を読み返す。
駅のトイレの個室内で、高校生の制服を着た男子生徒が、必死になってティーン雑誌に目を
通す姿は、呆れを通り越して滑稽にすら見えた。もっとも、見ている人間は誰もいないが。
月は先ほどの『鈍感なカレもこれなら気づく!私がとったちょっとエッチな方法!』という、訳
の分からない内容を読む。
読んで読んで読んで、しっかりと頭にいれると、よしっとつぶやき、個室を出た。
「アレ?もういいのか?」
入り口で待っていたリュークが、不思議そうに聞いてくる。
月はじっと、人間離れした死神の顔を見つめる。
鈍感なカレもこれなら気づく。
鈍感なカレ。
「ん?」
鈍感なカレが首をかしげる。
「………行くぞ、馬鹿。」
「!!なんで『馬鹿』!?おい、こら!俺の質問に答えろ!!」
後ろで騒ぐ死神を無視して、月は駅の改札には行かず、町の方角に歩を進める。
「?……なんか買い物でもするのか?」
「うん。」
「何処行くの?」
月はきっぱりと言った。
「衣料品店。」
『パジャマの選び方は、派手な色や無理に可愛らしいものを選ばない!あくまでシンプルか
つ、自分のイメージに合ったものを選んでね!』
シワを知らないかのような真新しいその布。
『触り心地がいいとカレが脱がせるとき感激してくれるかも!?』
柔らかく、上品な素材の着心地。色は白すぎないホワイトベージュ。シンプルだが、それ故に
スタイリッシュな曲線を描けそうな柔軟な生地。
『もしカレが選んでくれたならマーヴェラス!それを着て夜のベットにGO!!』
なによりも、馬鹿なペットがこういってくれた。「これ、似合うんじゃないか?」それだけで十分
だ。
月はさっそくそれを手に取る。
「あれ?それ、サイズでかすぎないか?」
LLサイズを不審がる死神に、月は「いいんだよ。」とドスの利いた声で叱りつけ、会計に走っ
た。
『肌は火照ったピンク色がベスト!ゆっくりお風呂に浸かって体をほぐして!』
何時もより長く浸かり、つらつらと自分のやろうとしている馬鹿な計画に尻込みしてきた。だ
が、着るだけだ。そう、着るだけ。着てみてダメだったらいいじゃないか、プライドも傷つかない し気がつかなかったらあいつが鈍感なだけだ。そうさ!僕はなにも悪くない!
何時も通り死神のせいにして、月はざばっと風呂から上がる。
『髪の毛は少し濡れたまま。そしてここが重要!パジャマのボタンをぎりぎりまで外して!』
父の総一郎が風呂に入ろうと脱衣所に足を踏み入れた。そして、横を何気なく通り過ぎた。
その姿を見て。
「…………………………………っ」
バスタオルをぼとぼとぼとっと落とした。
『香水をつけるともっといい!もちろん、あからさまなのはダメ!アプリコットやオレンジブロッ
サムの香りで私はいきました!』
妹の部屋でうろうろして、うろうろして、うろうろして……。
さすがにソレは、男としてどうかとおもい、背を向けた。その時、ドアが開いた。粧裕が兄の背
中を見つけて、
「お兄ちゃん?どうしたの?」
月が振り向いて、そして粧裕が固まった。月は何気なく、何気なく……、
「あ……粧裕……ちょっと……」
「お兄ちゃんその姿で何処行くのちょちょちょちょちょちょっと待ってお父さんお母さーん!!
お兄ちゃんが誰かを誘惑しようとしてるどうしようどうしようどうしよ」
「だー!!しー、しーーーー!!」
動揺しまくりの妹を宥め、月は香水を借りることを諦めた。
『さあ!カレのところに早速GO!体が湯冷めする前に、何気なくカレの横にぴったりくっつ
く!』
部屋に入ると、リュークがこちらに背を向けてゲームをしていた。何気なく、何気なく、何気なく
月はいつものように、リュークの傍に寄り、ぺたんっと座る。
「あ、おかえり……」
リュークがこちらを見た。
まず、目に入ったのが白い肌だった。上気したその胸元は、それでも白く血行のよい肌色
で。しっとりと濡れた髪が、艶然を相手に思い起こさせる。果実のように赤い唇が印象に残っ た。清潔感ある石鹸の香りが、妖艶な魅力とミスマッチしている。
リュークは、
「なあ。」
「なに?」
ぱっと、花のように笑うと、少年の雰囲気が少女のように変わる。
「ここから先、どうやって行けばいいんだ?」
と、ゲームの話をしてきた馬鹿に、月は黙った。黙って沈黙して静寂に変わり、それでも月は
笑顔のまま、
「ああ、ここはね。」
ぴとっと。
柔らかい肌を死神の腕につける。薄い生地のそれは、彼の肌の感触を惜しみなく伝える。
しかし死神に変化はない。
『もしもそれでカレがなんの変化も起こさなかったら?そしたらカレは貴方のことをなんともお
もってないってことなので、諦めましょう。』
「……………………………。」
違う!こいつが鈍感なだけだ!そうさ!だいたい死神と人間の美意識は違うわけで、ってあ
れ?違うってことは僕は全然器量がいいってみられてないってこと?あれ?つまり僕ってダ メ?駄目なのか?だめ……だめ…『諦めましょう。』?
「……………………。」
「あ?どうした?」
先を教えてくれない相手に、死神が尋ねる。
「……………ごめん。寝る。」
「そ…そうか?」
気力をなくした月を不審に思うリュークだが、さみしそうな後姿にとりあえずそう答える。
「あ、ちょっと待て。」
「?」
そのままベットに潜り込もうとする月を、死神が止める。腕をつかんでこちらを向かせると、獣
でも一掃出来そうな鍵爪を器用に動かし、開きすぎのパジャマのボタンを留める。
「お前さ、このくそ寒い日にこんな格好で寝たら絶対風邪引くぞ?」
丁寧に一番上のボタンまで留めて、ベットの脇に転がっていたぼてぼての上着を手に取る死
神に、月は不貞腐れる。
月は半眼で死神を見つめた。
「……僕さ。」
「あ?」
「……お前なんか嫌い。」
「はあ?いきなりなんだ?」
「だいっ嫌い。馬鹿。大馬鹿。僕はお前のことなんか、なんとも思ってないからな。」
「あー…はいはい。なんかよくわからんが、とりあえず上着着ろ。」
ばさっと上着を引っ掛けて、死神は宥める。そしてまた胡坐をかいてゲームに戻ってしまっ
た。月は唇を突き出し、タオルケットを手に取った。ずるずるとひっぱって、そして死神の膝に 頭を乗せる形でころんっと寝る。
「お…おい?」
「寝る。お休み。」
「こら。」
「なに?」
月が上目使いでリュークを見ると、やれやれという感じで死神がベットに置き去りの布団を手
に取り、
「タオルケットじゃ寒いだろ、それ。」
「……………………………。」
わざと体の曲線が浮き出る薄いタオルケットにしたのに、死神はわざわざ布団を月にかぶせ
た。
やっぱり駄目だこいつ。月は判断して、目を閉じた。
しばらくして、可愛らしい寝息が聞こえて、ようやく死神が溜息をつく。
「………頼むから、俺が我慢しているのもそろそろ気がついてくれ。」
芋虫のようにもぞもぞと動く子供の布団をもう一度かけなおして、やはり溜息。
「……お前の魅力に一々引っかかってたら、俺、お前の傍に居れないから…」
これから先、こいつが大人になったらどうなってしまうのか。
引っかからない可能性は、無きにしも非ず。
ちなみに余談だ。
月とLが出会い監禁したり記憶が消えたり戻ったりデスノートが発覚したりとそんな頃。
「ちょっとお風呂はいってくる。」
「はい。」
そして戻ってきて。
「ただいま。」
いつしか死神にやったそれを、捜査員全員+白い死神に見せて。
「ら……月ー!!おま……またそんな格好してええええぇぇ!!」
「ワタリ!カメラもってこい!カメラだ!ちなみにこの監視カメラの映像も保存だ!」
「だ…だめだー!!俺にはすでに妻と子供がいて……そ、そんな目で見るなあああ!!」
「ら、ら、月君!今夜僕と……」
「…………!……………!!」
動揺する全員に、やっぱり僕、変じゃないよなぁと首を傾げると、白い死神が不思議そうに、
「……なにやってるんだ?」
「もしかして、死神には効果ないとか?」
それはただ単に、レムが雌だからだ。
おしまい
Tuesday,February 08,2005
ロマンチックな恋だけが恋ではありません。
ロバート・ジョンソン
言い訳
いえけして私はこんなことをやったことはありません。
っていうか夢見がちです。いや、ほんとですよ?
思ったこともやったことないんですマジでマジでマジで
『時計兎夢見がちだよボコっちまおうぜ』とか思わないでください
だからそんな白い目で冷たい目で
私を見るのはやめてーいやー(壊)
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