![]() 伝わらない、想い ワタリが部屋に入ると、其処には異様な空気が漂っていた。 まず、月と松田だ。向かい合わせに座った二人は、じっとお互いを見つめている。 Lはそんな二人を、非常に複雑そうな目で見ていた。 (……どうした、夜神月………何故突然松田を睨む?ほんっとうに唐突だったよな!?) 松田は月の顔をまじまじと見つめ、 (なに?なんで突然睨んでるんだ?この子……僕、なにか悪い事した…?) 月は涙が零れそうな瞳で松田を睨む。 (僕のぎょぴちゃん縫いぐるみ ![]() 松田は完全に困惑したように目を逸らす。 (なんだ…思い当たらない……) そんな彼の様子を見て、月は信じられない、というように目を見開く。 (なんだ!ぎょぴちゃんを知らないのか!?きんぎょ注意報というアニメを知らないの か!!あの有名なアニメを知らないなんて、お前は警察官失格だ!帰れ!消えろ!僕の目 の前から消滅しろ!ポテチという言葉が有名になったあのアニメだよ、あの!空飛ぶ金 魚のぎょぴちゃんだよ!ファンだよ、畜生、悪いか!?) それを見て、はっと松田がなにかに気がつく。 (もしかして……) こくんっと、月が頷き、 (分かってくれたか、松田さん!そう!さっきから僕が持ってきたぎょぴちゃんがいないん だ!松田さんの傍においてあったから、もしかしたらアンタのお尻の下に潰れてるんじゃない か!?だから立ち上がって!すたんだっぷ!でもそれを言うとぎょぴちゃんを持ってきたことが竜崎やワ タリさんにバレるから……) 松田もまた頷き返し、 (よしっ、わかったよ!) 「月君……はい、シュガーポット。」 と、テーブルの端に置いてあったシュガーポットを手に取る。 (ちげぇよ、馬鹿!/でかっ) また月の目が鋭くなる。その様子を見て、松田もLも目を逸らした。 (なんで怒るのー!?) (関わりあいたくない………) 睨みながら、月はがっとシュガーポットを掴み、自分の珈琲に入れていく。その間、一度も松 田から目を離さなかった。 (僕のぎょぴちゃん……) (なんなんだよ、この子ー!?逃げたい…でも、逃げられない!) 「あの…お二人とも……どうかしましたか…?」 ワタリがおずおずと二人の間に入る。ようやく、月が目を逸らすと、その瞬間、大きな瞳から 透明な滴が零れた。 「なんでも……ないんです……」 (ヤバイ…目を開きすぎてて目が乾いた……) 「月君。」 (これは……月君を味方したほうがいいな……) そっと、Lが月の肩を優しく抱く。すると月が、Lの耳元で、 「気安く触ってんじゃねぇよ。」 (怖えー煤iT□T;)) 呟きを聞いて、Lは頷きそっと離れる。 (なんだ!?わからない……僕になにをしてほしいんだ!?) (立って欲しいんだよ、分かる!?なんでわからないんだ!)←わかるわけがない (なんだ…砂糖じゃだめだったのか!?いや…よく考えてみたら……砂糖ぐらいで睨むって いうのも変だし…) (ぎょぴちゃんだよ、ぎょぴちゃん!僕の大事なぎょぴちゃんが、アンタの尻に踏ま れてるかと思うと、僕はもういてもたってもいられない!さっさと立ち上がれ!) (はっ……もしかして……) なにかまた思いついたのか、松田が顔を上げる。月はじっと彼を見つめ、 (分かってくれた!分かってくれたんだね、松田さん!そう、僕のぎょぴちゃんだよ!) 松田はまた頷き、 「月君。」 神妙な面持ちで、月は松田の言葉を待つ。 「……はい、クリーマー。」 (ちっがああああぁぁぁぁあぁう!!(`□´メ)) その言葉に、月が突然立ち上がり、手を振り上げた。 ぱんっと乾いた音が、部屋に響き渡る。平手でぶたれた松田は、大した威力もないはずなの に頬を押さえてうずくまった。 (痛ってえええぇぇぇぇ!!ってこのガキ、指の間に画びょう仕込んでたあああ ぁぁぁ!!) Lが痛々しい場面を見るかのように、顔を背ける。 (血が!血があああぁぁぁ!今松田の頬から血が出てたあああぁぁ煤i ̄□ ̄;)) 月は怒りで震え、松田を睨み続ける。 (僕のぎょぴちゃん返せー……) 松田はしばらく蹲っていた。 (痛い……痛い痛い痛い……) そして、なにかに耐え切れなくなったようにぱっと立ち上がり、逃げ出す。 (もーダメダー!痛いー!!) 残された月とL。月は松田さんが座っていた場所をじっと見つめ、 (あれ?僕のぎょぴちゃん縫いぐるみがない!?なんだ、松田さんじゃなかったのか… …)←酷い そんな月の横顔を、Lは悲しそうに見つめる。 (夜神月……お前、惨すぎだぞ……?) (もしかして、Lのお尻の下に潰されているとか!?) 視線に気がついたのか、月はLの目を見返した。そして、キッと睨む。 (ええええ!?今度は私!?) (僕のぎょぴちゃーん!) そうして、もう一度手を振り上げる。しかし、その手が振るわれる前に、Lはがっと細い手首を 掴んだ。 (待て!が…画びょうが!がびょうがあああぁぁ!手の間に挟まってるうううぅぅぅ!) 皮膚が白くなるほど握り締め、Lは彼の手首を捻る。怯んだ隙に、細い肢体を押し倒した。 (って、いってええぇぇぇぇ!画びょうが今顔に刺さったあああぁぁぁぁ!!!) 月は、歯を食いしばって顔を背けた。 (おい!血が付くだろ!近づくんじゃねーよばーか!)←更に酷い (刺さってる!刺さってる!早くこの体勢から抜け出さなければ……!) あまりにも突然の光景に、ワタリは慌てて二人を止めに入った。優位な体勢であるLの肩を 掴み、 「竜崎、なにをやっているんですか!?」 (ってワタリが揺らしたからまた刺さったあああぁぁぁぁぁぁ ぁ!) 叫ぶが、Lはばっとワタリの手を払いのける。一瞬拘束が解かれたためか、月はLの体を押 しのけ、ソファの端に蹲る。 (あ!僕のぎょぴちゃん発見!なんだ、ソファの下に落っこちてたのかv) (だから画びょうで押しのけるな!!!!) 「一体……なにがあったんですか……?」 月を庇いながら、呆然としているLにワタリは尋ねる。だが彼は、唇を噛み、 (気づけよ、お前……) 月もまた、ぎゅっと自分の腕を抱き、 (よかった…僕のぎょぴちゃん無事でv) そして、ぽつりと……。 「竜崎が……突然」 「待てぇい!(゚Д゚)ノ」 何故か突然、竜崎が大声でツッコミを入れた。 想いは、なかなか伝わらない
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