まず注意書き
こちらは、私のHPに設置されている『かめとうさぎのつれづれちゃっと』で企画された作品で
す。
内容はデスノサイト『saccharin』運営者ケイ様の所の月君を、
かっぱらってきたお話です!
つまり、ここででてくる『ライト』君はケイ様のところのライト君です。
と、言っても、ご希望が『黒い月君』ということだったのでものすごく性格を変えました…しかもパラレル希望だったの
に、パラレルになっていないところとか…本当にスミマセン……けしてケイ様のライト君は、このような子ではありませ
ん…いや、信じてください……ケイ様、本当にありがとうございました!
ケイ様のサイトはこちら→saccharin.(行かれる場合は失礼のないようお願いします)
 では…広い心でお読みください……。





















 ある世界の片隅の、捜査本部にいるその2人はこんな会話をしていた。
 「竜崎。もっと肩、優しく揉んでくれない?」
 「はいっ。あの……」
 「なにさ?」
 「ライト君……私、いつになったら貴方にキスをしていいんで……」
 がんっ
 「なにか言った?」
 「なにも言っていません。ですから、本の金具部分で頭を殴らないでください……」
 「よろしい。」
 「………………。」
 「………………。」
 「……やっぱり我慢できません!ライトく……」
 ばっ、がんっ!ばしっ!ぐさっ!ぐしゃ……
 「ふざけるな!竜崎!」
 「ふざけていません!今日こそは……!」
 「この………」
 そして『ライト』は、膝を上げた。
 「蛙男があああぁぁ!!」
 瞬間。
 ぱちんっと。
 部屋が、停電した。





あなざーわーるどの君へ





 そして、上記とは別の世界の片隅の、捜査本部にいる3人はこんな会話をしていた。
 「松田さん、僕のこと、好き?」
 それを聞くと年上の恋人は、
 「もちろん!」
 満面の笑みを浮かべ、頷く。
 「竜崎、僕のこと、好き?」
 それを聞くと年齢不詳の恋人は、
 「当たり前でしょう。」
 真剣そのものの面持ちで、頷く。
 その答えに、月は満足気に頷いて、
 「僕もね、2人のこと、スキだよv」
 そしてこう、続ける。
 「だから、ちょっと買って欲しいものが……」
 「あ、松田。そこの資料をシュレッターにかけてもらえます?」
 「自分でかけてくださいよ。むしろシロップをかけて食べたらどうですか?買ってきますよ?」
 「だまれ。お前が食え。なにをやってるノロマ。さっさと資料を片付けろ。」
 「あー、やだやだ。人にモノを頼む態度を知らないなんて、資料のことで脳みそ一杯で常識的
なことを置いてきたんじゃないですか?故郷の宇宙に。」
 「蹴りますよ?」
 「怒りますよ?」
 「「……………………。」」
 「お前ら……」
 『月』はソファからゆっくりと立ち上がり、
 「さりげなく話を逸らすな、この犬共!!」
 2人の耳を摘んで捻る青年を見て、模木や相沢がそそくさと逃げ去る。耳を摘むなど一見可
愛らしく見える行動だが、千切りそうな勢いで摘んでいる青年を見て恐れ戦いたのだろう。Lと
松田は、スッポンに噛まれたような痛さに悶えている。ついに痛みで限界まで来ると、月は突き
飛ばしながら放し、
 「買って欲しいものがあるんだけど!」
 と、可愛らしく怒ってみせる。しかし、2人は掴まれた耳を押さえ絨毯に蹲り『あ、血が…血が
…』『み…耳が…耳が聞こえない…』と、痛々しく呟いていた。死神リュークが、哀れな人間を見
かねて目線を逸らす。
 やれやれ。月は肩を竦めてみせ、ソファに座った。
 「本当にさ……2人は僕のこと好きなの?」
 「そ、そりゃぁ、もちろん……」
 「心から、愛していますよ…」
 ちらっと細めで2人を見て、
 「ホントにぃ…?」
 「もちろんだよ!仕方なくこの変態爬虫類と君の事を共有してるけど、できればどんな手段を
使ってでも僕1人のものにしたいし!」
 「貴方が2人いれば、どれだけいいか!他の男に盗られるぐらいなら、いっそ閉じ込めてしま
おうと何度思ったことか!」
 2人同時に立ち上がり……耳はまだ押さえているが……熱烈な愛の言葉を浴びせてくる。ふ
ふんっと月は鼻で笑う。両足を組んで、
 「まあ、そこまで言うなら……。でも、仕方の無い事だよ。僕の体は一つだけだし。どんなに愛
してもらっても、分裂するわけにはいかないし。」
 そしてまた、猫撫で声で2人に囁いた。
 「だから、欲しいものがあるんだけど……」
 「松田。シュレッターに掛け終わったらあっちにある資料を整頓して置いてください。」
 「知りませんよ。なんなら竜崎、この機械に手を入れてみます?入れてくれるなら資料もつい
でにシュレッターにかけますけど。」
 「分かりました、整頓する仕事はナシです。頭から自分でつっこんでいろ」
 ばっと月が立ち上がると、振り向きもせずに2人が逃げる。それを無言で追いかけ始める
月。とりあえず、松田を先に殴ろう。そう心に決めて獲物を定める。
 瞬間。
 かちんっと。
 部屋が停電する。
 なんだ、Lたちが消したのか?月は思う。なんだ、月が強硬手段にでたのか?Lと松田が考
える。
 パニック状態に陥ることはなかった。すぐに部屋は明るくなったからだ。
 月はすぐに松田の襟首を捕まえると、拳を握り締め、
 「松田さん!どうして逃げるんですか!?」
 といいながら、アッパーを食らわす。
 するとLを捕まえた『ライト』が、
 「竜崎!逃げるなんて卑怯だぞ!」
 といいながら、膝蹴りを思いっきり腹に食らわせる。
 仰向けに倒れた松田を、月は腰に手を当てながら言った。
 「僕はただ、話を聞いて欲しいだけなんですよ?」
 蹲る竜崎を、ライトは腕組しながら言った。
 「もうお前のセクラハには耐えられない!ボクは帰るからな!」
 今までの場面とはそぐわない台詞を紡ぐ『ライト』。
 ん?っと松田、L、……そして『月』が、その青年を見る。
 「………あれ?」
 『ライト』もまた、3人を見回し……その内の1人、自分とまったく同じ顔の人間を確認すると。
 4人が、悲鳴を上げた。




 「状況を整頓しよう……」
 珍しく松田が仕切り、Lは視線を彷徨わせながら月のほうを見ようとしなかった。
 そして視線の先には。
 月が、二人いた。
 まるで双子のようにそっくりな二人。両方とも、現実逃避のように互いに視線を合わせようとし
ない。服装は違った。片方は先程までいた月と同じ服装、紺のVネック。もう片方は白のワイシ
ャツ。松田は、ワイシャツのライトを指差し、
 「……つまり……その……『君』の話を聞いてまとめると…だ。」
 ライトは、こくこくと頷く。松田は息を吸い込み、
 「実は双子とか言うオチはない?」
 両方が頷く。
 「………君は僕と付き合ってない?」
 ライトが頷く。
 「…………でも君はLとは付き合ってる?」
 また、頷く。
 「………三角関係なんて、まったく未知の世界?」
 髪が乱れるほど激しく、ライトが頷く。
 彼らはなにを話しているのか。
 一体、どういう状況なのか。
 それは、停電後に起こった出来事だ。
 突然、月が二人に増えた。
 唐突だ。手品のように、顔も形もそっくりの青年がそこに立っていた。
 服装が違う青年が、『月』で無い事は明らかであり、幾重にも質問を重ね、そして恐るべき結
果がでる。つまりそれは、
 「もしも…もしも、私達とは別に、異世界…あるいはアナザーワールド……そういったものが
あるとしましょう。そこの世界のライト君は『Lと付き合っているが松田と付き合っていない』とい
う関係なのかもしれません。……これが本当だとするならば、案外、『Lと付き合っていないで
松田と付き合っている』あるいは『Lとも松田とも付き合っていないで、健全で、普通の関係を保
っている』『月君はキラである。』……なんてものも存在するかもしれませんね。ともあれ、どうい
う現象かいま一つ分かりませんが、そういった異質の存在が……」
 ぴっと月を指差し、
 「……この世界やってきた。」
 沈黙が、4人の間に落ちる。
 がばっと。
 異世界あるいはアナザーワールドのライトが立ち上がった。
 「困る!困ります!ボクはやらなきゃいけないことがあるし…それに…ええっと……ええ…っ
と……」
 どもりまくるライト。おろおろと胸の前で拳を作り、
 「ええっと……ト……トイレ……失礼します…!」
 ソファの脚に小指をぶつけながら、ライトは逃げ出した。
 月も、ぱっと立ち上がり、
 「し…心配だから、見てくる!!」
 ソファに膝をぶつけながら、逃げ出した。
 後に残されたLと松田が、夢でないことを確かめるために、頬をつねっていた。




 「ど、ど、どういうことなんだよ!?」
 「それはこっちが聞きたいんだよ!!」
 月とライトは、互いにいがみ合いながら洗面所で吠え合った。
 「ふざけるな!ボクを元の世界に帰せ!」
 「帰れよ、勝手に!知らないよ!僕の顔でそんな喚かないでくれ!」
 「喚いているのはそっちだろ!?惨めに動揺して!」
 「んだと!?」
 「なんだよ!?」
 「あー、ちょ、ちょっと。ちょっと待った!」
 唸り声まで上げて言い合う二人。それを止めたのは、リュークだった。
 ライトはちらっと死神を見て、
 「……リューク……まあ、お前がいるなら……ボクがデスノートを使っていたのは変わってな
いんだよな?」
 「まあ、詳しく話さないと分からないだろうが、そうだろうな、きっと。」
 自分の死神に勝手に話しかけられ、むっとした月がリュークとライトの間に割り込む。
 「なんだよ、リューク。まさか、こっちの僕に憑くつもりか?」
 「そんなこと、一言も言ってないだろう……。」
 呆れたリュークが頭を抱える。どうやら、同族嫌悪とでもいうのか、二人は完全に敵対した目
付きで睨み合いを続けた。
 そこへ。
 「……どうした、竜崎、松田。二人して頬を抓って……」
 父だ。ドアの向こうから、彼の声が聞こえる。
 月は慌ててドアノブに手をかけ、
 「父さ……」
 「父さん!!」
 ライトの、まるで女性のような美しい指先が伸びて……月の頭を鷲掴みにすると物凄い勢い
で床に叩きつけて先にドアをくぐっていった。ついでに行き際、月の足を思いっ切りドアの間に
挟みながら。
 尻尾を踏まれた猫のような悲鳴を上げ、月はのた打ち回る。
 ライトはというと、さっさと父の前に走り、にっこりと笑った。
 「なんだ、月。来ていたのか?」
 「うん、まあv」
 「……今、猫みたいな悲鳴、誰か上げたか?」
 「うん、ドブ猫を拾ってきてねv」
 好き勝手な発言をし続けるライト。当然、月としてはおもしろくない。ドアをがりがりと引っかき
ながら、
 「あの野郎………」
 「月、落ち着け。今出て行ったら混乱するだけだぞ……」
 飛び出していきそうな勢いの彼を、死神が止める。隙間からじっとその様子を睨んでいると、
松田とLとの目が合い、慌てて二人は視線を逸らした。
 ライトは、優雅に月が座っていた場所に座ると、
 「そうだ。竜崎、事件の資料持ってきてよ。ボク、見たいな。」
 「え?わ、私が…?」
 どちらかといえば、いつもは松田がやっていたことを命令され、Lが混乱する。ライトは、すっ
と艶やかな目を細め、
 「持ってきて、くれるよね?」
 殺気を籠めて、囁いた。Lが飛び跳ねるように逃げる。父は、不思議そうに二人を見ていた。
身を捩りながら現実逃避を繰り返す松田に、ライトがこういってきた。
 「松田さん。ボク、この間買ってきてくれたケーキが食べたいなv」
 「へ?…あの、この間って…?」
 「ほら、駅ビルの、あれ。名前忘れちゃったけど。」
 「いや、それじゃあ、買ってくることは……」
 すると、ライトはくすっと少女のように笑いを零し、
 「…………分からなかったら全種類買って来たらどう?」
 「…………………はい。じゃあ、後で……」
 「今からだよ。」
 「はい。」
 そそくさと財布をもって、逃げ去る松田。
 入れ替わりで、あせあせと資料を持ってきたLに、ライトは微笑みながら、
 「竜崎。なんだか、ボク、疲れたなぁ。」
 「は…?じゃあ、家に帰れば……」
 どんっと、父が視線を外したのをいいことに、ライトはテーブルに踵を乗せる。紅茶のカップと
Lが飛び跳ねた。
 「疲れているボクに、『帰れ』?」
 「あ、いや、その……」
 「『帰れ』?」
 「…………足、揉みましょうか?」
 「そうしてくれる?」
 その様子を見て、ひたすらトイレのドアに引っかき傷を作りながら、月は歯軋りをした。
 「あ…あいつ……竜崎や松田さんに命令していいのは、僕だけなのに……」
 「あ、なんか愛とか感じちゃってる?」
 「違う!」
 月とリュークの会話を他所に、ライトの命令はさらにヒートアップしていく。
 「ねえ、竜崎。この間雑誌に載っていたダンヒルの限定版ライターが欲しいんだけど。」
 「え…でもあれは……イギリスでの限定発売ですので……」
 「だ・か・ら?」
 ライトは資料を捲りながら、Lを見ようともしない。
 「…………少々、手に入るのに時間が……かかるかと。」
 「二日で用意して。」
 「はい…………」
 「竜崎、もっと優しく揉んでくれない?」
 「はい………………」
 その主従関係に、さすがに父も不審に思ったらしい。恐る恐ると言った感じで、ライトに話し
かける。
 「ら…月……どうした?なにかあったのか?」
 「ううん。竜崎が、やりたいっていうから、やらせてあげているんだ。」
 「そ、そうか………」
 居辛くなったのか、彼はそそくさと出て行った。
 ぱたんっと、扉が閉じたと同時に、月が修羅の顔でトイレからでて来てライトに飛び掛った。
邪魔なLを蹴り飛ばし立ち上がると、がっと襲ってきた月の両手を掴む。ぐぐぐっと二人で相手
の両手を抑えこみながら、
 「貴様……どういうつもりだ!ここは僕の世界だぞ!好き勝手なことをして……!」
 すると相手はふっと人を小馬鹿にするような笑いをすると、竜崎に聞こえない……もっとも、
床の上で痛みに悶えているので普通に話していても聞こえないだろうが……小声でこう言っ
た。
 「なに言ってるんだい?ボクの世界の竜崎は、優しくボクの肩を揉んでくれたり、好きなものを
買ってくれたりしてくれるような、尻に敷かれる男なんだ。この世界でもそうしてくれなきゃダメだ
よ。」
 「なんで!?」
 月の質問に、
 「ボクは神にならなきゃいけないから、元の世界に帰れなかった場合、お前と入れ替わる必
要があるだろ?躾は早いほうがいいんだよ………」
 ライトは下劣なものでも見るような目つきで月を見下すと、いきなりぱっと両手を離した。前の
めりに倒れる青年に、ライトは冷たい目つきのまま、口元に優しい笑みを浮かべ、
 「あ、ゴメンね。冗談だよ?ついつい自分の生活のように溶け込んじゃったよ。だって寂しか
ったんだ……、本当に、ゴメンね。」
 「ぐ……っ!」
 にこやかに謝ってくるライトに、月の顔はもはや憤死寸前だ。口調は心から申し訳なく思って
いる柔らかさなのに、冷たい目つきがそれを納得することを許さない。ぶちぶちっと絨毯の毛
を悔し紛れに掴んでいると、ライトはにっこり笑ったまま、月を猫掴みした。
 「竜崎、ちょっと彼、納得していないみたいだから、二人で話してくるよv」
 「え…あ、はい……どうぞ……」
 腰を引いて、素直に頷く。ずるずるずると引きずりながら、二人はトイレの中へ消えた。入っ
ていった瞬間の月の顔は、明らかに殺意に漲っており、このままではライトの安否が……
 その瞬間、猫が足でも踏まれたような、壮絶な悲鳴が響き渡った。
 ……数分ほど響き渡っただろうか。止んだと同時に、ドアを押して出て来たのは……ライトだ
った。少々服装に乱れが生じているものの、本人は涼しい顔をして月の荷物を手に取ると、L
に微笑む。
 「じゃ、竜崎。ボク、帰るね。」
 「は?どこへ?……というか、松田は?」
 「ケーキやっぱりいらないや。じゃあね。」
 そしてライトは、月の家へと帰っていく。ぱたんっとドアが閉じられたと同時に、Lは即座に月
の元に向かった。トイレのドアを開けると、
 「りゅ〜ざきぃ〜……」
 涙を一杯に溜めた月が、どこから持ち出してきたのか首にロープを巻かれてドアノブにペット
のように括り付けられている。所々殴られたような痕があり、そして……ズボンが脱がされ両手
が後ろ手に縛られ、洋服は破られているし潤んだ瞳でこちらを見上げているものだから……
 「うう…負けちゃったよ……って、うわ!?」
 がばぁっとLは、はだけた胸に抱きついた。リュークが、ああ、やっぱりと目を覆う。
 まあその後、松田が帰ってきてLを後ろからぶん殴ったのだが。




 次の日。
 よく晴れた昼下がり。抜けるような青空も、爽やかな風も入ってはこないホテル内捜査本部。
 一日たっても、ライトは元の世界に帰れずにいた。といっても、本人はまったく困らない。もし
も帰れないようであれば、この世界の月を抹消すればいいだけの事だ。そうしたらまたLの躾
を初めからやり直さなければ。やれやれと溜息をつき、今日もLの躾………もとい、捜査内容
を聞き出すために部屋に入る。
 「どぅりゃああああぁぁぁ!」
 奇声と共に、バスローブ姿の月が横から飛び掛ってくる。ライトは鮮やかにその物体をかわ
すと、通り過ぎた馬鹿の襟首をひょいっと掴んだ。
 「まったく…なんて頭の悪い……それに、昨日括り付けておいたのに脱走しているなんて……
この世界の竜崎も役に立たないな……」
 「は…離せ!離せ馬鹿!」
 じたばたと暴れる相手を突き飛ばし、ライトはLが座っているソファに近づく。
 しかし。
 がっ、と。
 松田が隙を見て、ライトを後ろから羽交い絞めにした。あーあ、捕まっちゃったと、リュークが
部屋の隅で溜息なんかをついている。
 これにはライトも驚いたらしく、ぎょっと松田に振り向き、
 「な、なにしているんですか、松田さん!」
 「……悪いけど……」
 暴れる青年を死に物狂いで捕まえて、
 「君だと僕の事、好きになってくれないじゃないか!」
 「当たり前ですよ!だってボク、松田さんのことなんとも思っていないし!」
 「それじゃ困るの!」
 どう足掻いても抜け出せないことに気がつき、ライトは月を睨みつける。
 「くそっ!別の人間を味方につけるなんて……卑怯者!」
 「お前に言われたかない!」
 もっともなツッコミだが、ライトは怯まない。
 「ふんっ!恋人を1人に決めることもできない奴が、偉そうな口叩くな!」
 「はんっ!愛情を複数に与えることもできない奴が、いい気になるんじゃない!」
 「三角関係なんて不埒なこと、ボクには出来ないね!やるんなら歌舞伎町にでも行け
ば!?」
 「じゃお前は自分の世界でLのこと満足させてるのか!どうせお前みたいなやつの尻に敷か
れる竜崎なんて、ろくなもんじゃ……」
 「黙れ!」
 言ってはならぬ禁句だったのか、ライトは噛みつかんとばかりに怒鳴りつけた。
 「Lのことを馬鹿にしてみろ!?お前の喉笛なんか、噛み千切ってやる!」
 びくっと月は震えると、歩み寄ってきたLの後ろに隠れる。
 「りゅ…竜崎……コイツ、怖い……」
 「ウチの月君も、このぐらい私のことを愛してくださるといいんですけどね……」
 Lのぼやき声が聞こえたのか、はっとライトは顔を赤らめ、
 「ち、違う!ボクは、Lのことなんか……あ、あいつは勝手に、付き合わないとキラと断定する
なんていってきて…いや、そんなことどうでもいい!離せ!ボクをどうするつもりだ!!」
 「そうですねぇ。なんなら、貴方が私と付き合って、松田がこっちの月君と付き合うというのは
どうですか?」
 勝手な話を進めてくるL。松田はああっと頷き、
 「それなら、一人一つ月君を独り占め出来ますね。」
 「な!?」
 あまりに気軽に言ってくる彼らに、ライトは愕然とする。なんなんだ?なんなのだろう、こいつ
らは?
 「竜崎!お前は形が同じであれば、どっちでもいいと思っているのか!?」
 くわっと月が食って掛かるが、Lは飄々と、
 「いいじゃないですか。彼が元の世界に帰るまでの『お試し期間中』というやつで。」
 なにを馬鹿げたことを!もちろん反論することを期待して月を見つめると、彼はぽんっと手を
打ち、
 「……あ、それ。なんかいいかも。」
 馬鹿な!?死神のほうに視線を送ると、『まあ、こういう奴等だし』と肩をすくめていた。
 「ふざけるな!」
 ライトは、そんな呑気でいい加減な彼らの態度にキレる。
 「ボクは…ボクはお前みたいな竜崎とは、絶対に付き合わない!ボクの世界のLは、もっと尻
に敷かれてくれて、なんでも言うことはいはい聞いてくれて、馬鹿でエッチで蛙顔で……」
 「なにか問題でもあるんですか?昨日のことを思い出して頂ければ分かるように、私、貴方の
尻に敷かれていますよ?」
 Lは『なにが問題なのか、まったく分からない』というように首を傾げてみせる。
 違う。
 なにか、違う!
 彼らは、根本的な何かが自分の世界とはまったく違う!
 ライトは、有らん限りの力でこう、叫んだ。
 「違う!Lは…Lはボクのことをもっと真剣に考えてくれる奴なんだー!!」
 「考えてますよ?私。」
 まるで綿のような軽さの発言に、ライトは目の前にいる、恋人に模した男を罵倒した。
 「黙れ!お前なんかとは付き合わない!ボクは元の世界に帰る!」
 「だから、その帰る間のお試し期間中って、今言ったばっかりじゃないか。」
 自分の恋人の片方が、別の男と付き合うというのに、月はのほほんのほほんと勧めてくる。
 「違う違う違う!お前らはなんか違う!ボクはお前なんか好きじゃない!ボクが好きなのは…
…好きなのは……りゅーざきー!たすけてー!!!」
 瞬間。
 かちんっと。
 停電は起きたが、すぐに電力は回復した。
 そして………。




 目の前に、愛しの蛙男がいた。
 「ら…ライト君!!」
 自分を羽交い絞めにしている松田はおらず、がばぁっとLはライトを抱きしめる。
 どうやらここは、捜査本部のホテルらしく、偶然にも竜崎しかその場にいない。相手にしてみ
れば、停電と同時にいなくなって、停電と同時に帰ってきたのだから、不可思議な現象に驚くは
ずなのに、
 「ど…どこに行っていたんですか!?突然いなくなって…心配したんですよ!?」
 背中が軋むぐらい、つよく掻き抱くL。いつもだったらぶん殴る行為だが、ライトは成すがまま
にさせていた。
 帰って来た。
 らしい。
 「竜崎……」
 ライトはうるっと瞳に涙を浮かべ、
 「帰ってきたよ!竜崎!」
 ばきぃっ
 「寂しかった…もう、ボクを一人ぼっちにさせるなよ!」
 どかっ!がんっ!がんっ!
 「それから……気安くボクに触るな!蛙男!」
 ぱんっ!ぱんっ!がしっ!ぐさっ!
 「わかったら返事は!?」
 痙攣しながら倒れている哀れな蛙に、ライトは満面の笑みで命令した。
 



 「……帰っちゃったね?竜崎。松田さん。」
 「そうだねぇ。」
 「そうですね。」
 「なんだったんだろうね、今回。」
 「なんだったんだろうねぇ。」
 「なんだったんでしょうねぇ。」
 「で?なんでお前らはあの男の命令を聞いていたのかな?」
 がんっ!がんっ!
 「いや、それは……ねえ?」
 「体に沁みこんだ癖というか……貴方の顔で命令されると、どうしても……」
 どかっ!どかっ!
 「もう僕意外に心を奪われたら、コンクリートと海に心中してもらうからv」
 「はい……。」
 「はい……。」
 「「「………………………。」」」
 「でも、あの子も可愛かったですよね、竜崎(ぼそり)」
 「そうですよね、女王様みたいな感じでしたけど(ぼそり)」


 某港町 埠頭
 「沈めええぇぇぇぇぇ!!」
 「やめて!やめて月君!竜崎ー!一人だけ逃げるなああああぁぁぁぁぁ!」














おまけ

 「ねえ、リューク!」
 「なんだ?月。」
 「あの男の住所が分かったよ!saccharinっていう所にいるらしい!もう一度勝負してやる!」
 「それは出来ないぞ。」
 「なんで?」
 「そこのサイトさんに迷惑がかかるからだ。」
 「リューク、なにを言ってるの?」
 「いや、ゴメン。なんでもない。ところで、なんだかこの話、途中から俺の発言がやけに少ない
な。」
 「ああ、それはね。」



 「これを書いた奴が途中で、お前の出番をすっかり忘れていて、あとから書き足したから
だよ。(いや、マジです。)」





 「なんだそれ!?」







ごめんなさい…本当にこんな話でごめんなさい(ごりごりごり←土下座する音)
いや、ケイ様のライト君は、もっと素敵なんですよ?あわわっ、どうしよう…いいんだろうか…?
パラレルです。誰がなんと言おうとパラレルです!(暗示)







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