ひとだから Aサイド ]\



 月と喧嘩をした。
 分かってる。俺が悪かったんだ。
 「    」
 「  」
 でも、ただなんとなく……なんとなく思いついたことだった。
 「      」
 胸の内に、ぽっ、と浮かんだ、一つの願い。俺がそれを言ってみると……
 「  」
 月は、すごくびっくりした顔をした。
 「     」
 なんで、そんなにびっくりするのか、よく分からなかった。俺はそんなに変なこと、言っただろう
か?何度も自問自答してみるが、未だ答えは出ない。
 「      」
 別に、なんとなくだよ、そんな気にしないでという意味合いの言葉を言っても、月の動揺は収
まらない。俺の肩を掴み、何度も揺さぶった。
 「     ?        !
          !
          !」
 ぼろぼろと涙を流し、月が怒鳴る。
 「      」
 「      !」
 俺が、落ち着くように言っても、月の怒鳴り声は収まらない。
 月が怒鳴るなんて珍しい。だから、俺はちょっとむっとして、
 「       」
 酷いことを、言ってしまった。
 すると次の瞬間
 月は俺の頬を、思いっきり叩いた。
 「        」
 ……叩くなんて、酷い。
 だって俺、間違ったこと、言ってない。それなのに、月は俺のこと……叩いた。
 「         」
 だから……頭きて、月を傷つけるようなことを言ってしまった。
 「         」
 「         」
 狼狽する月に、俺は更に酷い言葉を浴びせる。
 「         」
 ……別に、本心で言ったわけじゃないんだよ?
 「                  」
 ただ……自分の正しさが否定されたから
 大好きな人に、それは違うと拒絶されてしまったから
 俺は、自分の意見を聞き入れてもらうために……相手の心をずたずたにしてしまった。
 「        」
 月が俺の肩から手を離し、首を振る。
 可哀相なことを言ってしまったと思いつつも、これで月がちゃんと聞いてくれると思って、俺は
笑った。
 「



                    」
 俺は、月のことをちゃんと好きだよっていう意味を込めて、笑ってあげた。
 「
                」
 ずっと、守ってあげるから。そう、言ってあげた。
 「







       」
 喧嘩となった切欠の、俺の言葉。
 なんで、こんな風に思ったのかよく分からない。
 「



      」
 中身はまだ人間だと思ってたのに……最近、おかしい。
 こんなこと考えるなんて
 人間は、こんなこと、考えないのに


 月は、震えながらずっと俺の言葉を聞いていた。
 まるで、苛められた小動物のようだ。
 「       」
 俺……酷いこと、いったんだ。
 「




       」
 俺は、喧嘩したお詫びのつもりで、月の額にキスをした。
 髪を撫で、何度も何度も、謝って、キスをした。
 そうすると、月は震えなくなった。
 沢山泣いたせいか、疲れてぼんやりと虚空を見ていた。
 「

        」
 俺はふざけながら、月を抱き上げる。
 以前、お姫様抱っこをすると顔を引っ掻いてきたが、今日は俺の肩に顔をうずめていた。
 「        」
 ベッドに寝かせ、飲み物をとってくる。
 月は泣くと、喉が渇くといっていたから。
 喧嘩したすぐ後だったから、できるだけ明るく、俺は部屋に入る。
 月は、ベランダに立っていた。安ホテルの景色は、そんなに良いものではないのに。
 「            」
 呼びかけると、月が振り返り、微笑んでくれた。
 「            」
 俺も笑い返す。よかった、これで仲直りだ。
 「ごめんね。」
 月は、謝った。
 ううん、いいんだよ。だって悪いのは俺だから。だからそこから離れたほうがいいよだって手
擦りの向こうなんて危ないじゃないか月だめだよ動いちゃ駄目……………
 「あ」
 俺が手を伸ばした刹那、彼の姿は窓の向こうに消えた。
 なんの躊躇いもなく、なんの感慨もなく……月は、ベランダから飛び降りた。
 俺は窓の外を覗いてみる。
 そして、呟いた。
 「            」



 俺、なにがおかしかったのかな……。
 俺……間違ったこと、言ったのかな……?
 そうだ……今度、マットのところに会いに行こう。
 会いに行って、どこが違っているのか確かめてみよう。


 そうすれば
 もう、月は傷つかなくてすむはず
 だから
 だから
 だから
 月
 目を、開けて?







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