艶のたらも様の作品
















僕の恋人は気まぐれだ。
第一堂々と二股を掛けるし自分に不利な状況では
平気で僕を見捨てるし…まあそういうのも僕には魅惑的に見えるけれど。

そんな彼にも実は意外と寂しがり屋なところもあったみたいで。
つい仕事の忙しさにかまけて彼に構うのを忘れて二週間。
珍しく彼の方からメールが来た。















prey















会いたいです。

その言葉で始まる可愛らしいメールで
月は待ち合わせ場所に安っぽいホテルを指定した。
僕は彼からのそんな誘いにどきどきしてそのドアを開けた。

すると目の前が真っ暗になる。
僕の視界を塞ぐ両手の持ち主はどうやらドアの影に隠れてたみたいだ。

「松田さん…久し振り。会えなくて寂しかったよ。」
「ああ、ごめん。仕事が遅くてついうっかり君のことを忘れてて…」
「つい?うっかり?」
心なしか月の声に棘がたっていく。
「あっ、ううんっ!会いたかったんだけどね…あの、その」
慌てて言い直そうとしてももう遅かった。

「ついやうっかりで僕を忘れてしまう程度の気持ちなんだね…松田さんは…。」
月は悲しそうに言う。
「そ、そんなことないよ!!僕、どんなことがあっても君のことが好きだ!」
僕は彼を安心させようとそう必死で伝える。
しかし僕はこの時点で気付くべきだったんだ。
その声に僅かに愉悦がまじっていることに。

「ほ、ほんと…?嬉しい…。」
甘えるような声で次いで出たのは先制パンチ。

「じゃあ、どんなことでも我慢できるよね…?」
そう言って彼はどこから取り出したのかわからない手錠を僕の手首にとりつけた。










「う…月くん何でこんなことを?」
「松田さんが悪いんだよ、二週間も僕を放っておくから。
しかもついやうっかりなんて、流石の僕も傷ついちゃうよ。
だから、」
月は僕の顎を持ち上げて告げる。

「ちょっとだけいじわるするね。もうそんな酷いことはしないように。」
彼の笑顔はぞくりとするほど綺麗だった。





僕は目隠しをされて多分奥にあるだろう部屋に連れて行かれた。
そしてパンツをズボンと一緒に脱がされ両足まで拘束される。
そうして床に膝をつかされてようやく目隠しを外された。

最初に目に入ったのは黒いボンテージを身にまとった月。
体のラインが浮き出ていて何というかそそられる…。
そこにぴしゃりと一発鞭が入る。
「ごめんね、痛いことは余りしたくないんだけど、松田さんの顔がにやけてたからさ…。」
バツの悪そうな振りをして楽しそうに月が笑う。

「うーん、そうだね、まずは手始めに僕のを綺麗にしてもらおうかな?」
彼はジッパーを下ろして噛んじゃ駄目だよと優しい口調で忠告しながら
自身を僕の口に埋める。
僕はそれを素直に咥えてくちゅくちゅと刺激を与える。
だけど後ろに回されて錠をされたため、両手をつけなくて不安定で、
うまく顎を動かせない。

「あっ、あぁっ、あ、アッ!!」
もっと締め上げようとしたら歯を立ててしまい、月は呻いた。
そして僕の後方に立って鞭をしならせる。
「歯を立てるなって言ったでしょう、聞こえなかったんですか?」
怒りをこめた静かな声で言うと彼はハイヒールの踵を僕のお尻にぐりぐりをつきたてる。

「あ、あう…痛いよ月。」
「口答えしないでください。」
踵がより深く肉に突き刺さる。
「ア!ああ!やめてっ月君!!」
「何嫌がってるの?恥ずかしい?
でも松田さんのここは凄く元気だね。」
月は言葉で辱めると今度は爪先で僕の高ぶりを撫でる。

「僕に踏まれて興奮するなんて、
まともなふりして実は変態なんだね、松田さん。」
挑発的な月の眼差しを感じて勃ちあがるモノが悲鳴をあげた。
「ら、月、お願いもう入れさせて…」
耐え切れずに頭を床につけて懇願しても月は取り合う様子も無い。

「はは、そんな事したって許してあげないよ。でも…。」
含みを持った口調で月は僕を押し倒して馬乗りになる。
「まあ少しくらいはサービスしてあげようかな。」
そう囁くと彼はボンテージについたファスナーを開けて
頭を抬げて来た自身に触れた。

「あっ、はぁんっ、あっ、は…」
月は僕の目の前で自分を慰める。
「松田さん…どう?
僕のこんなことするのはを見るのは初めてでしょ?」
いつもは強がりながらも恥じらって僕に抱かれる月が
今日は僕を誘惑するように自分の中心を淫らに扱く。
「んんっ、ふぁ、あっ、や…。」
月は先端から零れる液体を指に絡めて
ひくつく後孔を少しずつ解した。

「あっ、やぁ、あ、あ!」
順応してきたソコに月はもう一本指を入れる。
ぐちゅぐちゅという水音が僕の耳にも聞こえる。
快楽を追い求めて奥へ奥へと指を進ませる月が
僕の顎をくいっとつかんでキスを求める。

「ん…んぅぅ、あ、あぅ、あっ、あっ!」
飲み込めない唾液を垂らしながら月が震える。
「ああっ松田さん!イク、イク…!!」
腰を激しく振って月自身は飛沫をあげる。
月はその白い残骸で僕のシャツを汚した。
その様子を間近で見せられた僕は
ただ先走りで股の間を汚すしかなかった。





月は自慰を終えるとボンテージを脱いで白いシャツに着替えた。
「月くん?」
情けない声でその行動を問うと月は僕の疑問には答えずに
カバンから携帯を取り出して微笑む。
僕はそれを見て衝撃を受けた。
彼がこんな時間に自分から電話をする相手なんて一人しか思い当たらない。

「もしもし、竜崎?今から会いたいんだけどだめかな…?」
甘えた声を出してそう告げて月は電話を切った。
僕の泣きそうな必死な顔を見て月は残酷な言葉を伝える。
「じゃあ僕は竜崎に会ってくるから松田さんはここにいてね。」
優しい声でしらっと言って足枷に鎖を繋げ
その先をベットの脚に到達させて南京錠をつける。

「逃げられるのは困るからね。
手だけは楽にしてあげるから我慢してね。」
じゃあね、と手錠を外して月がすたすたと去っていく。
「月くんっっ!!」
彼の名前を呼ぶ。無いに等しい最後の悪あがき。
それに対しても彼は僕の期待する反応は見せなくて。

「僕、松田さんのことが好きだよ。
だけど僕と付き合うなら、」

愛おしむような顔で毒を吐く。
「これぐらいのことは我慢出来ないといけないよ。」
そう言って彼はこの部屋の扉を閉じた。










それから僕をどん底に突き落とす音。
きぃっと僕からは見えないドアの開く音。
そして声が聞こえる。
低い声。
僕にはそれが誰だか簡単に分かった。

「竜崎…。」

自分でも驚いてしまうほど小さな声で僕は呟いた。
同時に今日はやけに働く僕の頭が月の思惑を理解する。



本当に彼は非道い。



ずたずたに原型を無くすまで僕を傷つけて、
その傷を舐める事によって
彼の事を忘れないように
彼の事しか考えられないようにする。



薄っぺらい壁越しに聞こえる彼の叫び声。
止むことのないそれを聞いて
僕はひたすら限界を超えた自身を扱く。
モノはあっさりと絶頂を迎えるけどすぐに硬さを取り戻して
猿のように野蛮に何度も何度も射精をする。
隣にいるはずの彼の声をネタにして。

そんな自分にほとほと呆れきる。

それでも手はぬめるものから離れない。










     結局僕は気を失うまで白濁を吐き出し続けた。










夢の中の感触。
膝枕をした月がずっと僕の頭をなで続ける。
僕の顔を見下ろして天使のように微笑む。
そんな幸福はここには無いのに。










それでも僕は何度も彼に夢を見る。
自分の持ち得る全ての妄想をかけて。

















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