華の亡骸 キヌ様から頂きました!






「・・・っ!月!」

 

タッタッタッとごついブーツを鳴らして駆け寄って来るメロに、月はうわっと口元をヒクつかせた。
黒のレザーのノースリーブに、揃いの黒いパンツに、黒い手袋に、じゃらじゃらとシルバーアク
セ。
メロじゃなきゃ、並んで歩きたくないタイプだ。
同じように月の前まで辿り着いたメロも思うけれど。

二人は相手の頭から足の先にまで視線を走らせてから、目を合わせた。

外見で好きになったわけじゃないし、服は後日一緒に買い物でも行こう。

メロと月は同じ事を考え、微笑み合った。

 

「・・・ごめん。待ったか?」

「いや。遅刻しなかったんだね、偉いよ。」

 

年上らしく優しく誉めると、メロの眉は不機嫌そうによる。

メロは自分より年下である事を気にしているらしいが、その考えさえ月には可愛い。

軽く寄せられた眉、嫌そうに睨み上げてくる青い眼。

ノースリーブから、すらっと伸びる細い腕。

裾が開けられているせいで覗く縦長のヘソ。

成長途中の、薄く筋肉がついた腰回り。

・・・嗚呼・・・可愛い・・・。

ゾクンっと月の背骨を伝う欲情。

・・・本当に・・・物陰に連れ込んで、跨りたいぐらい可愛い。

 

 

付き合い始めてから、約一ヵ月半。

何だかんだと邪魔が入り、メロと月はフレンチキスより先に進めないでいた。

メロはそれでもいいのかもしれないが、月には全然物足りない。

正直、早くメロを食べたい。

でもいきなり跨ったら引かれるぐらい、月にも分かる。

やはり竜崎の言う通り、他所の男で処理した方がいいのだろうか。

 

 

どうしても欲情するから、最近夜会うのは控えている。

今日のデートは自分への戒めも含め、健全に遊園地デート。

でも昼間に会うのさえ欲情するなんて、と月は目を細めた。

 

「・・・どうした?」

「え?・・・何が?」

「・・・眉顰めたじゃん。」

 

どーでもいいけど、と付け足したが、メロの瞳は不安そうに揺れている。

メロが嫌いなわけじゃない。

メロに嫌われたくないから、我慢しているのだ。

月は欲情を押え、清廉な笑みを浮かべる。

メロを不安にさせたくない、と月は右手を差し出した。

 

「手。・・・繋いで?」

「え!?・・・あ、ああ。・・・ちょっと待ってろ。」

 

ごそごそと手袋を外し出すメロに、月の顔に本心からの笑みが浮かぶ。

素手で手を繋ごうとしてくれるメロが嬉しい。

やっぱり好きだ、と月は改めて自分の気持ちを実感した。

外した手袋を無造作にポケットに入れ、メロの手が月に触れようとした瞬間、

 

「偶然ですね。」

 

と、嘘臭い声が背後から掛けられた。

メロと月はバッと振り返ると、それぞれ憎い顔を発見してきつく睨む。

 

「・・・引き篭もり二人で、デートか?」

「たまには日の光でも浴びた方が、いいかと思いまして。」

「・・・竜崎と付き合いだしたの?・・・お似合いだよ、ニア。」

「知人です。・・・月さんたちは・・・不釣合いな組み合わせですねぇ。」

 

メロは竜崎に、月はニアに。

ことごとく邪魔してくる二人に、毒を吐くがさらりと流される。

メロの同級生のニアと、月の同級生の竜崎。

今日のデートは絶対ばれないように、細心の注意を払ってここまで来たのに。

 

「せっかくの偶然ですから。」

「ご一緒してもいいですか?」

 

ムカツク敬語二人に、言葉で勝てたことがない。

メロと月は、悲痛に目を見合わせた。

 

 

どうにかジェットコースターなど、メロの隣りの席は譲らなかったが、邪魔なことに変わりはな
い。

二人きりのはずだったのに、イチャイチャするはずだったのに。

 

「・・・いい加減にしろよ、竜崎。」

 

昼食を食べ、また何台か乗ったあと、飲み物を買いに行ったメロとニア。

メリーゴーランド前のベンチに腰掛け、月は横に座る遊園地に不釣合いな男を睨んだ。

膝を抱え、指を咥え、竜崎はカクっと首を傾げる。

 

「何がですか?」

「何じゃない。・・・今回はどうやって場所を知ったんだ?」

「秘密です。」

 

メールも手紙も、形に残る方法では約束していない。

二人きりで、周囲に誰もいないのを確認して、今日のデートの約束をしたのに。

はぁ・・・と月は深く溜め息を付いた。

 

「・・・ニアだけは連れて来るなよ・・・。」

「協定を結びましたので。」

「・・・お前らは馬鹿か・・・」

「・・・月君は私が来て有難いでしょう?」

「・・・。」

 

有難い。

だってメロが可愛くて、格好良くて堪らない。

竜崎達がいなかったら、2、3回トイレに連れ込んでいるところだ。

 

「・・・本当に・・・我慢しないでやった方がいいですよ・・・?」

 

そうなのだろうか、と月は目を伏せた。

メロに自分の性を曝け出して、下手したら振られるよりは。

秘密を守ると言う竜崎を、信じたほうがいいのかもしれない。

 

「メロたちが戻ってくるまで・・・5分ぐらい、短期集中でちょっとやってあげましょうか?」

「・・・5分・・・」

「足りませんか?でも、まだ今日は帰らないのでしょう?帰ったらじっくりやりますよ?」

「・・・じっくり・・・?・・・」

「2、3日やり続けて・・・。すっきりしたら、またメロのところに戻ればいいじゃないですか。・・・ね
ぇ、月君・・?」

「・・・ン・・・・ぅ・・・」

 

ツー・・・と耳の後ろから首筋を、一本の指でなぞられる。

それだけの刺激で、熱い吐息をついてしまうなんて。

2、3日やり続けるなんて、なんて魅惑的な誘いなんだろうか。

慣れ親しんだ竜崎の体を思い出し、月の瞳がとろんと蕩け出す。

 

「・・・で、も・・・・メロ・・・」

「そうと決まったら早くしないと。・・・ニアたちが帰ってきてしまいます。」

 

ぴょんっとベンチから飛び降りた竜崎に、片手を引かれる。

立ち上がりついて来るよう促され、月は戸惑って瞳を揺らした。

 

「5分でもやれば、少しはすっきりしますよ?」

 

5分では、余計に体の熱が上がるだけな気がする。

一度やり出したら止まらない気もするが。

月は竜崎に握られている手首に、視線を落とした。

久しぶりの他人の感触に、ゾワゾワと肌が疼く。

ついて行こうかな、月がそう考えだした時、バっと竜崎の手は振り払われた。

そしてグイっと引っ張られて、包み込まれる。

 

「俺の男に触るんじゃねぇ!」

「・・・チッ・・・早かったですね・・・」

「・・・竜崎さん、動くのが遅いです。」

「戻ってくるのが早いんですよ。」

「・・・メ、・・・メロ・・・」

 

月の首に回された素肌の腕、顔に触れるメロのさらさらした髪。

背後から胸の中に抱き込まれている、理解した途端、月の顔は火を拭いた。

自分を包むメロの匂いと、そして・・・。

月は凄い速さで鳴る自分の心音を聞きながら、ツンツンっと指先でメロの腕を突いた。

 

「あ?何?・・・腕・・・これ、駄目かよ?」

 

駄目じゃない、とぶんぶん首を横に振って。

月は心臓を高鳴らせつつ、上を向きメロと視線を合わせた。

思わず抱き込んでしまって、照れてるメロ。

けれど照れてるのは隠してるつもりで、憮然とした顔を作っている。

可愛い・・・、と思いながら、月は口を開いた。

 

「今の・・・今の台詞もう一回言って・・・。」

「・・・今の?・・・腕?」

「違う。・・・もっと前。その・・・俺の・・・」

「男。」

「もっ・・・もう一回・・・」

「俺の男。・・・もう一回言うか?」

 

こくこく頷く月に、メロは、俺の男、と囁く。

メロの声が体中に染み渡って、月はうっとりと瞳を瞑った。

守られるように抱き締められ、自分のものだと主張されて。

肉欲に支配されそうだった心が、清められていく感じがする。

セックスなんかしなくってもいい。

月は目蓋を開き、自分を覗きこむ青い目に微笑みかけた。

 

「・・・メロ・・・デートの続きし」

「メロ、アイス溶けます。早く持って下さい。」

「あ、やば。んっ・・」

「っ!!!」

 

ニアに横から差し出されたアイスを、舌を伸ばしてぺろぺろと舐める。

頭上で卑猥に動くメロの舌に、グワッと欲情が月の体内を駆け巡った。

バニラアイスを舐めるメロに、カッと目を見開き、すぐにスウッと細める。

・・・セックスしないで、いられるわけがないだろうが!

 

「うま・・あ!?え・・・ちょっ・・・月!?」

「え・・・月さん!待ちなさい!」

 

月は素早くメロの腕を取ると、無理矢理その場から走り出す。

混乱しているメロを強引に引っ張って、月は二人きりになれる場所を探す。

竜崎達が邪魔できない場所。

 

「ちょっと、月!?」

「観覧車!二人で観覧車乗るぞ!」

 

はああ!?と不審そうなメロの声が背後に掛けられるが、気にしない。

月は行列に割り込み、罵倒されながら観覧車に滑り込んだ。

 

地上から離れてしまえば、もう誰にも邪魔されない。

全力疾走したせいで、ゼーハーと二人で荒い息をついて。

落ち着いた頃には、4分の1ほど上がっていた。

 

「はあ・・・何なんだよ、一体。」

 

はははっと楽しげに笑って、項垂れていた頭を上げた月は、ふいに気付く。

・・・密室に二人きりだ。

二人きりになりたいから、竜崎達から逃げたのだが。

こんな狭い空間で、二人きりになったのは始めてだ。

やばい、月の顔がカアー・・と赤面する。

 

「・・・月?」

 

セックスしようと連れて来たのではなく、あのやらしい舌に吸い付きたかったのだ。

取り敢えずの目的は、ディープキス。

だが、月は密室でセックス以外したことない。

キスだけするなんて、逆に恥ずかしいし難しそうだ。

 

「おい・・・。もー・・とりあえず座れよ。」

「え・・・うん・・・。」

 

床に膝を付いていた月は、偉そうにふんぞり返っているメロ側と、無人の椅子を交互に眺め
る。

メロは体面の椅子を勧めているのだろうが、月はそっと立ち上がった。

 

「え!?・・ラ、月・・?」

「何?」

「あ・・・や・・・別に。」

 

当たり前のように向かい合い腿の上に足を開いて座ると、メロは動揺を隠すようにそっぽを向
く。

キスする、キスだけする、と頭の中で繰り返し、するりと腕を首に絡める。

胸を密着させ、額をくっつけると、メロの薄い唇が、音を出さずに自分の名前の形に動いた。

 

「メロ。・・・キス。」

「ライ・・ト、あの・・・」

「キス、して。」

 

少しの躊躇いのあと、メロの片手が自分の後頭部に添えられる。

来る、と目を瞑ると柔らかい感触が唇に与えられ、数十秒で離れて行ってしまった。

 

「・・・月・・・」

 

優しく髪を撫でる手、腰に回された腕、愛しげに囁かれる自分の名前。

十分幸せだが、それだけでは足りない。

月は熱っぽいメロの瞳を覗き込み、ニーッコリ笑った。

 

「舌出せ。」

「・・・は?・・・え・・・ライ・んっ!!??」

 

出さないなら、迎えに行くまで。

顔を傾け、月はメロの口内に舌を差し込んだ。

驚愕を示す声と、見開かれた瞳。

だが月は、構うものか、とメロの舌を吸い上げた。

 

歯列をなぞり、口蓋を擽り。

舌を吸い上げ、甘く噛んで、自らの唾液を送る。

 

見開かれていた目はきつく瞑られ、体はズルズルと前に滑って行っていく。

遂に椅子から落ちて、床に腰を付いても月はまだ口を解放しなかった。

 

口の中がバニラで甘い。

メロの体が熱い。

たまに漏れるメロの声で、自分の体の熱も上がる。

跨ったメロの腰に熱い塊を感じ、月は脳が沸騰するほどの興奮を覚えた。

・・・もう、このまま最後まで・・・

 

カチャッ

「お客さ、あああんっ!!??」

「・・・チッ・・・もう一周。」

「月君!ここは公共の施設ですから!ヤっちゃ駄目!!」

「りゅーざき・・・邪魔するなよ。」

「邪魔じゃくて!とにかく出なさい!」

 

竜崎がメロに跨って、もう一週と指を立てている月を引きづりだし。

ニアが床に寝て、茫然自失しているメロを引きづり出す。

割り込んだ事を係員さんに謝る竜崎の手によって、観覧車前の地面に月は放り投げられた。

 

「まさか・・・竜崎に注意される日が来るとは、思わなかったよ・・・。」

「観覧車の中でヤっていい訳ないでしょう!見なさい、メロ死にそうですよ!?」

 

言われて見ると、メロは地面に両手を付き、ゼーゼー肩で息をしている。

耳まで真っ赤な初々しい様子に、ヘラァと崩れる月の頭を竜崎は叩く。

 

「こんな所で初体験は、流石に可哀相でしょう!?」

「・・・初・・・体験・・?」

「メロを汚さないでください!」

「お前ら・・・本当に邪魔だな。」

「ラ、月・・・。あの、初体験なのか!?」

 

濡れた口を拭いながら、メロは驚愕に目を見開いた。

は?という三人の視線気付かず、メロは再度、初めてなのか?と尋ねる。

驚きつつも、嬉しそうなその顔。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・うん。」

「「はあああ!?」」

「う、嘘・・・、嘘!ごめん、月!」

 

膝でにじり寄って来たメロに、ぎゅうっと抱き締められた。

明らかにメロは勘違いをしているが、嬉しそうだからま、いっか、と月はうっとりと目を瞑る。

 

「ごめん・・・。俺、竜崎と関係あったんだと思ってた・・・。疑ってごめん。」

「ん・・・いいよ。勘違いさせるような態度取った僕も悪いし・・・。」

「初めてなんて・・・・。月、大事にするからな!」

「うん。」

 

大事にする、一生大切にする、と愛を告げた後、メロは何気ない風を装ってトイレの方へ歩き
出した。

大事にされることに感動しつつ、メロを追いかけようとしたニアを足を掛けて転ばせるておく。

前屈みに小走りになっているメロの背中を指差し、月は幸せそうに竜崎に言った。

 

「大事にするって。」

「痛っ・・・つまり、初めてじゃなかったら、大事にしないってことですよね!」

「初めてだと思ったみたいだから。」

「アンタみたいな穴だらけの初めてが、痛っ!」

 

ゲシッと蹴られて、ニアはまた呻き、憎々しげに月を睨んだ。

竜崎はメロの背中を同情するように見送ってから、屈み込み月に視線を合わせる。

頬を桜色に染めて恋する乙女のような月に、竜崎は言った。

 

「月君の初体験がいつ誰となんて知りませんが・・・。初めてのふりなんてできるんですか?」

「女の子じゃないんだし。ばれるわけないだろう。」

「ばらします!過去の男、一通り調べて、メロの目を覚まします!」

「メロは僕の言う事を信じるから。僕の悪口言ってメロに嫌われたければ、好きにすれば?」

「・・・初体験ということにするなら、善がっちゃ駄目なんですよ?」

「え?」

「初めてで気持ちよくなんかなれないでしょうが。善がったり、腰振ったり、跨ったり。

 そこ舐めろ、触れ、突け、動け、もっととか、気持ちいいとか。・・・いつものように言えないん
ですよ?」

「月さん・・・そんなに煩いんですか・・・。」

「煩いというか、快感に貪欲というか。とにかく、初めてと言い張るなら、月君がリードする事は
できませんね。

 大事にすると言われた以上、セックスは当分先で。メロ意外とヤらず。やっとヤっても優しく一
回とか。」

 

竜崎は呆然としている月の目を覗き込んで、ニタァっと笑う。

 

「そんなの、月君に我慢出来るんですか?」

「・・・・無理・・・」

 

泣き笑いのような表情を浮かべ、月は出来ないと首を横に振った。

メロが喜ぶから、初めてということにしたのに。

初めてのふりをするには、他所で処理しておいたほうがよさそうだ。

メロに真実を打ち明けて悲しませるか、他の男とやって嘘をつき通すか。

 

「・・・どうしよう・・・」

 

念願のエッチが益々遠のいた結果に、月は泣きそうに顔を歪めた。

 




 華の亡骸 キヌ様に無理やり書かせ…(ごほんごほん)書いていただきましたv
 メロ月……!書いて欲しかったんですー!無理やりなキリ番で脅して…(げふんげふん)お願いして書いてもらった
んです!嬉しいですー!
 キヌ様!ありがとう御座いました!






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