Space Operaの七介様からいただきました!+押し付けss





 つきあかり


 眠りに身を任せるというのは、まるで墓に埋まるような感覚だ。
 生きているというのは、様々なことを見聞きし、色々なことを感じ
 気がつけば、痛みばかり背負っている
 体中を暴れまわる感情という名の痛みを受け続けなければならない
 眠りに入ると、瞳を閉じ、穏やかな感覚で、土の中に埋もれてしまうように感じる
 もう起きなくて良いように、大切な人が土をかきわけ、自分を横たえる
 誰にも邪魔されないように土を被せ、そこに訪れるのは永遠の安らぎだ

 いつも眠る真際、そんな想像ばかりが浮かぶ

 そしていつだって目覚めるのは、生きている証拠の『痛み』のせいなのだ。

 まるで、誰かが乱暴に土の中に手を突っ込み、体を鷲掴みしたかのように、覚醒は不快だ。
痛みは以前受けた傷口から発生し、全身へ広がり、やがては脳を侵食する。はっと瞳を開け
ると、痛みは倍増して、情けない呻き声が口から漏れた。シーツに顔を押し付け、タオルケット
を握り締める。痛みは消えない。
 「月……」
 助けを呼ぶかのように、ニアは呟いた。でも、現れないし、応えない。自分の元から逃げた。
当たり前だ。傷つけたんだから。
 「う……ぁ……らいと……月……」
 許しを請うかのように、引き攣った声で何度も名前を呼ぶ。焦点の合わない瞳を虚空に向
け、やがてそれは窓の外で止まった。
 夜空には、大きな満月があった。一瞬だけ、痛みが和らぐ。
 だがそれも、同じ空を月も見ているのではないかと思うと、憎悪にかわった。そのお前の隣に
いるのは、いったい誰だ?
 「ぅ……ぅぅ……ぅ」
 叫ぶ力すら痛みに奪われ、すすり泣く。だが、明日にはまたモニターの前に座り、指示を出さ
なければ。
 「らい………」
 貴方も、この月明かりの下にいるのだろうか?その隣に、自分を傷つけた死神を従え、寄り
添い、この空を見て微笑んでいるのか?自分には、一度すら向けなかったそれを?
 「……らいと……」
 ああ
 痛い











 月は誰かに呼ばれたような気がして、はっと辺りを見回した。しかしそこは静かな海辺で、冷
たく、果てしない。
 空に浮かぶツキが、月の影を砂浜に焼き付ける。少し前を、メロが歩いていた。砂浜に沈む
足を楽しそうに踏み、月に早く早くと時々笑いかける。
 「メロ」
 誰に呼ばれたのかはっきりしないまま、月は首を傾げながら言った。
 「そろそろ、野宿しよう。今日はもう次の街に行くのは無理そうだ。」
 「えー、ヤダ!」
 やはり、メロから文句が出た。それを無視して、月は適当な岩場を探す。
 「俺、野宿、ヤダ。」
 「僕も嫌だ。でも、街は見えてこない。そろそろ諦めよう。」
 「もう月、疲れたのか?俺がおぶって飛んであげようか?」
 「その場合、明日の新聞に空飛ぶ人間の記事が載るから僕は嫌だ。」
 てきぱきと、背中に背負ったリュックから道具を取り出し、野宿の準備をし始める。前の町か
ら出るとき、買い揃えといて良かった。まあ、もともと野宿は覚悟の上だったのでそれほど落胆
はしていない。
 一人で準備をし続ける月に、メロはさらにご立腹となり、地団太を踏んだ。
 「だから、列車にしようって言ったんだよ!なんで次の街まで歩きなんだ!?」
 「見張られてた。連中も、まさか海辺歩いて逃げるとは思わないだろ。」
 これが、いつもの月の逃げ方だった。列車や車は包囲網を張るくせに、徒歩の人間には目も
向けない。まあ、無理もないが。
 「なんで?いいじゃん。」
 メロが、首を傾げる。
 「見つかったら、俺が守ってあげるよ。」
 ぴたり。月の手元が止まる。動きの変化に、メロが小首をかしげていると、ちょいちょいっと月
が手招きをした。傍による。まるで、母親が子供に縋るように、メロを抱きしめる月。柔らかい
髪に顔を埋め、メロはなんだか機嫌がよくなった。
 「メロ……」
 「月?どうした?なにか、怖いことでもあった?」
 「メロ……メロ……」
 「うん?」
 メロは笑う。その笑顔を見ず、月は更にきつく抱きしめる。
 「ごめんね……」
 掠れた声音で、謝罪をした。



 ずきんっと、一段と激しい痛みが脳を揺らす。食いしばった歯の隙間から、悲鳴が漏れる。
 空に浮かぶツキを、睨み付けた。ああ、なんて恐ろしく、美しいツキ。あの人と同じ。決して、
自分の手には届かない。それならば、自分の前から消え去ってしまえば良いのに。
 「月……」
 手に入れて、今度こそ壊して、そうすれば、もう二度と自分から離れない。Lと勘違いされても
いい。自分に向けられなくてもいい。あの微笑を向けられ、眠りにつきたい。
 笑っているのか?メロ
 一度だって、自分には勝てなかった友人
 この美しい空を見て、自分を嘲笑っているのか?
 「……メロ……!」
 憎しみが、痛みを増幅させる





 寝袋を用意したが、入る気になれなかった。ぼんやりと、海の向こうを見つめる。メロは、荷
物の整理をしてると見せかけてなにやら様々なものを引っ張り出していた。どこで買ってきたの
か、月が着そうもない服や(次の街に行ったら速攻で捨てよう荷物の邪魔だ)時々被る帽子な
んかを取り出して暇を潰している。海は穏やかだ。風もない。天候の心配もなさそうだ。
 ちょいちょいっと、再びメロを手で招き寄せると、今度は背中に乗ってきた。帽子をかぶり、似
合う?なんて笑う。似合う似合うと撫でてやった。メロが嬉しそうに月を後ろから抱きしめる。
 しばらくは、そのままでぼんやりと空を見た。波音が、やけに五月蝿い。夏場だというのに、
風は涼しかった。
 暗い夜空に、眠るには鬱陶しいほどの輝かしいツキ。けして眠らせてはくれない。美しいから
文句も言えない。もっと寒かったら、抱きしめてくれる腕も温かかくて嬉しかったのに。
 「綺麗だね……」
 月は、ぽつりと素直な感想を述べる。




 痛みが大分治まり、ニアは見上げる。窓は高い位置にあった。まるで監獄だ。息苦しい小部
屋にある、けして手の届かない窓。そこから見えるのは、さらに届かぬ空のツキ。
 暗い夜空に、標のように瞬く星。しかし、これからの自分の道を標してくれるわけではない。そ
して、ツキ。日の光を借りてでしか輝けない光は、やけに寂しく、悲しい。その儚さが、痛みを和
らげていた。
 これが
 隣に、彼がいてくれたら
 見え方が、違うのだろうか?




 「え?」
 「だから……空だよ。綺麗だねって。」
 無粋な聞き返しに、月は唇を尖らせる。
 メロは、黙っていた。メロ?と月は振り返る。
 彼は、空を見ていた。
 しかし
 そこには、なんの感慨もない
 嫌な予感がする。月が手を伸ばそうとすると、メロが笑った。
 「ああ……うん……キレイだね」
 月は
 笑い返すことが、出来ない
 「め……ろ……」
 「うん……キレイ……だと、思うよ?あ、でも月のほうがすげー綺麗だから!」
 本当に?
 本当に、そう思ってる?
 「メロ……お前……」
 「ん?」
 本当に
 本当に、そう、思うことが出来ている?
 メロ
 「ごめんね……」
 本当に
 まだ、人のココロを保っている?
 それを聞くことすら出来ず 月は、ただ謝罪の言葉を口にして




 月明かりは、誰の上からも無情に降り注ぎ
 





七介様!ありがとうございました!
 そ……それなのに、こんなssしかつけられなくてすみません……
素敵な絵なのに……ツキの描写とか、もっと綺麗に書けたらと……思ったのに……
すみません……そして、ありがとうございました!




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